2009年03月07日

制作過程を少し公開

★ホームページ補完ブログ★

以前の記事で、木炭を使用していることに触れましたが、今回は木炭にクローズアップします。
:エピソード1:パステルを使っての制作方法及び保存性、魅力について
■内容はコチラ→http://ikuyo.sblo.jp/article/23629680.html
:エピソード2:パステルのメーカーとその特徴について
■内容はコチラ→http://ikuyo.sblo.jp/article/26668714.html

:エピソード3:木炭について

木炭という画材は最も単純で、基本的な、かつ最初に登場した筆記具です。幼いころ焚き火をした木の燃えさしで絵(らくがき)を描いたことはありませんか?単純ですが、とても強い黒がハッキリと出て、あちこちに描けて楽しかった記憶があります。

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木炭画で素晴らしい作品といえば、私はまずはオディロン・ルドン。
ルドンは自らが「最も本質的な色だ」と言う、黒・・・色彩よりも黒がはるかに優れた精神の代理者と考え、木炭やリトグラフといったモノクロームの精神性の高い作品を数多く残しています。

他にもマティス、ドガ、クールベ、ドーミエ、ロートレックなど西洋の画家達や安井曾太朗などが、木炭による明暗の調子の美しい素晴らしい素描を遺しています。私は高校の時に本格的に木炭でデッサンするようになりましたが、安井曾太朗さんの人物デッサンに憧れて、(中学時代は野田弘志先生の作品に魅了されて鉛筆大好きっコでした)模写をしていました。

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安井曾太朗《人体(男)》1907年 木炭、紙62.8×48.1cm 愛知県美術館

また習作や下絵としてですが、ダ・ヴィンチやミケランジェロなどその域を超越した優れた作品があるのは周知のとおりです。

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レオナルド・ダ・ヴィンチ《聖アンナと聖母子》1498年 木炭、鉛白・紙 139×101cm ロンドン、ナショナル・ギャラリー

黒といっても様々な黒があり、つまりはグラデーション、トーンで、それを表すのに最適なのが木炭だと思います。日本の画用木炭といえば「伊研」さんですが、これらの木炭は燃えさしのように燃焼させたものではなく、充分に乾燥させた後、容器の中に密封させて、蒸し焼きにしたものです。原料として使われる木材は柳が最も多く、葡萄、菩提樹、プラタナス、桑など、種類はかなり多くあります。また、その原料の種類や蒸し焼きの際の温度によって、硬質のもの、軟質のものがあり、描画に褐色から青みがかった灰色まで微妙な色の差を生み出します。これらの木炭を組み合わせて使うことによっても調子の表現の幅を広げることができます。
★詳しくは伊研ホームページ→http://www.fsinet.or.jp/~iken/index.html

木炭の濃淡は描いては擦りこむことで作れます。描き込んだ後、ふあぁ〜っと布でやるとぼやぁ〜となって、また描いてふあぁ〜ってして、の繰り返し、こうして出来るグラデーションが絶妙です。また、鉛筆のように光を反射しないので、塗り重ねると光沢のない、しっとりとした黒が得られます。まさに漆黒の闇です。木炭は固着性が低いので、でこピンで落ちるし、消し具による抜きが良く、光の明暗を描き出すことが出来て、その感じはめちゃくちゃ気持ちいいです。今では練りゴムを使っていますが、高校の時はなぜか、本格派は食パン、と思いこんで食パンを使っていました。

あとこの「ふあぁ〜」とするとせっかく描き込んだものが全部ぼやけるのですが、(グラデーション作り、立体感、全体感を掴むのにも必要なことなのですが)まだ鉛筆的構築方法で描いていた時分、これを先生にされると台無しにされたような気になって、とても恨んでいました。徐々に木炭の扱いが分かってくると、木炭と油絵は素材を別にして、同じなんや!と体感して感動したのを覚えています。(油絵を先にやっていたので。)
でも、彫刻にしても通じるのだろうし、デッサン、その描き方、つまりはものの見方というものは何を造る際にも同じなのだろうと思います。私を一から指導してくださった大阪市立工芸高校の先生方、デッサンの重要性を耳が痛くなるほど言ってくださった市大の教授方には言い尽くせない感謝の想いでいっぱいです。

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大谷郁代《camel》 2007年 606×910mm 木炭,アクリル/MBM木炭紙 個人蔵

大学に行って卒業して色んな素材を巡り巡って、また木炭に帰ってきた2007年作品↑
ほぼ木炭なので木炭画といえると思います。高校時にもよく授業でスケッチに行った思い出深い天王寺動物園のラクダです。
そこからまた色が欲しくなって、色々やってみて・・・で現在のパステルです。

木炭を扱う際注意しなければならないことと言えば、木炭の中心にある軟らかい芯の部分を細い金属針で取り除いておくことや、汗などの脂分を画面に付着させないこと、どちらも画面の汚れになってしまいます。それと鉛筆同様、木炭の粉が容易に剥落してしまうので、必ず定着液で定着しておくことです。木炭はあらゆる種類の紙、布などに描けますが、木炭紙が最も一般的です。木炭紙は亜麻などの硬質繊維を原料とし、丈夫なので、繰り返し擦っても毛羽立たない頼れるヤツです。また、木炭紙には規則的な漉目が施してあり、木炭の食いつきをよくし、その細かな凹凸を利用して、描画に豊かな調子の幅をもたらします。あと吸い込みで鼻が真っ黒になります。嫌ならマスクですが、大体の人は気にしません。鼻をかんでは「わぁ〜がんばったなぁ〜」と思うはずです。
それでは最後に最近の作品の工程を・・・↓

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後ろのポスターは高校の大先輩でもあり、母校の指導にあたられた礒江毅さんのバニータス。いつもこっちを見てくれているので、気が引き締まります。

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パステルに移行した現在。↑まだ全然途中ですあせあせ(飛び散る汗)
この作品は次回展示に出せたらと考えています。
★展覧会情報はコチラ→http://www.ohtaniikuyo.com/news/news.htm
完成がどんなになっているか、ご都合良ければ観に来てくださいませ。
長い稚拙な文章をお読みいただき、ありがとうございました。
posted by Ikuyo at 02:44| Comment(2) | TrackBack(0) | 使用画材について

2009年02月13日

パステルメーカーと特徴について

今日より京都アートギャラリーフェアー2009がスタートです。
日曜日までの3日間の展示です。私の作品は7点納めさせていただきました。
どうかご高覧いただけますよう、よろしくお願いいたします。

会場詳細はコチラ→http://www.kyoto-art-gallery-fair.com/
大谷HPはコチラ→http://www.ohtaniikuyo.com
瀧川画廊HPはコチラ→http://www.takigawagarou.ecweb.jp/

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さて作品の受け渡しも済み、一息つけたので遠い前回の続き、ホームページ補完ブログ・私の使用画材のパステルについてのテキストをかきます。
:エピソード1:パステルを使っての制作方法及び保存性、魅力について
内容はコチラ→http://ikuyo.sblo.jp/article/23629680.html


:エピソード2:パステルのメーカーとその特徴について


パステルの大手メーカーはやはりヨーロッパに集中していますが、我が日本にも立派な老舗パステル専門メーカーがあり、それは「ゴンドラパステル(made in kyoto)」です。(ホルベイン(Osaka)からもソフトパステルは作られています。)
私は主にこのゴンドラパステル(全242色)と細部の描き込みにコンテ・ア・パリのパステルペンシル(全48色/フランス)、ダーウェントパステルペンシル(90色)、カーブオテロ・パステルペンシル(全60色/ドイツ)などなどを使用しています。

パステルは色彩の混色に限りがあるため、もともと多くの種類の色が用意されています。(←パステルトーンと呼ばれる所以)そしてその色彩展開にはかなり各社の色が出ているので、どれを選択するのかは使い勝手など含め、好みだと思います。
色数の多さで言えばパリ万博に1650色を出展し金賞を受賞したロシェのパステル(ラ・メゾン・ドゥ・パステル)で現在も567色のパステルを製造しています。ただ非常に高価で日本で入手は困難だと思います。1720年に出来た超老舗店だとか。
Memo:
この1650色のパステルはパリのポンピドゥー・センターの所蔵品として、今も大切に保管されています。一方ドガのアトリエで見つかった、愛用のロシェのパステル・ボックスはオルセー美術館に保管されています。ドガと言えば踊り子のパステル作品ですが、08年秋のオークション・サザビーズで3,704万2.500ドル(約36億円)、紙作品で史上最高額で落札されていました。アートバブル崩壊など言われますがやはり良いものは欲しいということでしょうか。

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色によって各社のものを併用しているので、パステルメーカー(ソフトパステル)で代表的なものの特徴を分かる範囲であげますと(個人的な感覚です)、

★ゴンドラパステル(全242色小さな2本入り/日本)
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中間色のラインナップが豊富で、微妙なニュアンスの日本人的な色相感も好きです。粒子は他と比べると少々粗めだけど、伸びがあって良いです。手触りは少し固めですが、画面にのせるとちょうど良い描き心地で、混色も容易。まず他社のように紙を剥く手間(柔らかい程減りが早く、描いてる途中に巻紙を剥くのがあまり好きではないのです。特に巻紙が画面に擦れたりしたらイラっとします)がいらず、グイグイ描けます。それからフィキサチーフをかけても多少落ち込みますが、変色はありません。

★ラウニー(全194色/イギリス)
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粒子が極めて細かく、発色にも優れています。ソフトで滑らかに伸び、耐久性は世界的にも評価されています。価格もお手ごろ。

★シュミンケ(全283色/ドイツ)
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高品質で描き味なめらか、しっとりと紙になじみます。重ねて塗っても定着力があり、美しく描けます。水準も価格も高い!

★セヌリエ(全552色/フランス)
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色数が大変豊富でとても柔らかく、バターのようにしっとりとしています。大変伸びが良く、肌合いはまさにベルベット、美しいです。それに伴いちょっと価格が高め。

★レンブラント/ロイヤルターレンス(全203色/オランダ)
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適度な硬さ(少しセミハード的)で強い発色、定着力もあります。重ね塗りでもきれいに描けて耐久性も良いのですが、あまりにもハッキリしていて私はちょっと苦手です。 ちょっと肌合いがテラっとしている気がします。お求め安い価格。

★ニュートン(全200色/イギリス)
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適度な柔らかさと伸び。ホワイトにジンクWとチタニウムWがあるのも良い。価格はお手ごろ。

使ったことはないのですが★ルフラン(全203色/フランス)、★ホルベイン(全250色/日本)顔料には有害物質を含まず安全なものだけを使って作られているそうです。 低価格。などもあります。

長々と読んでいただきありがとうございました。
posted by Ikuyo at 03:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 使用画材について

2008年11月30日

作品とパステルについて

ブログについて再度考え直していて、ちょっとストップしてしまいました。この間、覗きに来てくださった方々、ごめんなさいあせあせ(飛び散る汗)
やはり、ホームページを補完する役割のブログにしていきたいので、テキストになるよう今回は真面目に使用画材の説明をしたいと思います。

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大谷郁代【Re:】2008年

:エピソード1:パステルを使っての制作方法及び保存性、魅力について

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私は油出身で、油彩やテンペラ、混合技法、アクリル、水彩、ミクストメディア、版画の基本は一通り学び、制作してきましたが、現在は主にソフトパステルを使用して制作しています。

パステルは、顔料に水性メディウムを加えて、棒状に練り固めたものです。フランス語のPaste(練り固めたもの)がその語源です。それまでのチョーク、木炭に並んで、17世紀に考え出され、18世紀になって、その軟らかな色調からロココの画家達に急速に普及していった描画材料です。
私にとってパステルの最大の魅力は手から直接的に描ける自由さと、独特なヴェルヴェットのような柔らかな質感、その微妙な色合いにあります。
自己流の過程としてはパネルに貼った紙に薄くアクリルで下塗りをしてから木炭で全体の陰影を描いて、最後にソフトパステルを使って制作しています。(細部の描きこみなどにはパステルペンシルなども使います。)

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↑展示風景(新龍展:瀧川画廊)

耐光性について聞く方もおられますが、定着液で正しく保護しておけば色が沈んだり、褪せることもないです。加えて、退色を防ぐパステルプライマー(パステル用地塗り剤・シュミンケより)なども出ていますが、パステル自体、鮮やかさと優れた耐光性の維持について製造各社が唱っています。それに現実的には耐光性ばかりが作品の保存性に関わるものではありませんから他の画材においてのその心配(悪条件下で長期保存しない)と変わらないと思います。
ただ組成上メディウムの量が少ないために、画面上のパステルは容易に剥落するので描画の途中、完成後には必ずパステル用のフィクサチーフを吹きつけますが、その際、顔料が定着液を吸い込んでしまい、色調が一段鮮明になりやすいので、前もってどの程度の濡れ色になるのかを確認しておくことも必要です。
画面の保護のため完成した作品はアクリル板入りの額に入れて展示しています。スケッチブックなどに描いた習作はパラフィン紙をはさんでおくと片側のページに写ってパステルが取れる心配がありません。

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モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール【ポンパドゥール夫人の肖像】1752〜55年

また、鉛筆、コンテ、パステルなどの固型画材は下絵、素描のためと思われがちですが、パステルの色鮮やかな面的表現の可能性が、タブローとして認められてきた理由のようです。パステルと言えば踊り子の作品がとても美しいドガ(1834-1917)やルノワール(1841-1919)など印象派の作品が思い浮かぶかもしれませんが、油彩と見紛うばかりの精緻な表現の作品(例えば上画像のラ・トゥール1704-1788やルブラン1755-1842、シャルダン(1699-1779)など)数多くあります。不思議で心地よい夢のような色合いのオディロン・ルドン(1840-1916)の作品はパステルの魅力が詰まっていて絵を見ているとため息が出ます。
このようにパステルは色彩の美しさに合わせて奥深い様々な表現が可能な大変魅力的な描画材料なのです。

長々と読んでいただき、ありがとうございました。
またしばらく間が空くかもしれませんがたらーっ(汗)続けていくのでよろしくお願いします。ホームページの方はほぼ出来ているのですが、全てのページが完成してからお知らせしたいと思います。

posted by Ikuyo at 19:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 使用画材について