2008年11月30日

作品とパステルについて

ブログについて再度考え直していて、ちょっとストップしてしまいました。この間、覗きに来てくださった方々、ごめんなさいあせあせ(飛び散る汗)
やはり、ホームページを補完する役割のブログにしていきたいので、テキストになるよう今回は真面目に使用画材の説明をしたいと思います。

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大谷郁代【Re:】2008年

:エピソード1:パステルを使っての制作方法及び保存性、魅力について

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私は油出身で、油彩やテンペラ、混合技法、アクリル、水彩、ミクストメディア、版画の基本は一通り学び、制作してきましたが、現在は主にソフトパステルを使用して制作しています。

パステルは、顔料に水性メディウムを加えて、棒状に練り固めたものです。フランス語のPaste(練り固めたもの)がその語源です。それまでのチョーク、木炭に並んで、17世紀に考え出され、18世紀になって、その軟らかな色調からロココの画家達に急速に普及していった描画材料です。
私にとってパステルの最大の魅力は手から直接的に描ける自由さと、独特なヴェルヴェットのような柔らかな質感、その微妙な色合いにあります。
自己流の過程としてはパネルに貼った紙に薄くアクリルで下塗りをしてから木炭で全体の陰影を描いて、最後にソフトパステルを使って制作しています。(細部の描きこみなどにはパステルペンシルなども使います。)

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↑展示風景(新龍展:瀧川画廊)

耐光性について聞く方もおられますが、定着液で正しく保護しておけば色が沈んだり、褪せることもないです。加えて、退色を防ぐパステルプライマー(パステル用地塗り剤・シュミンケより)なども出ていますが、パステル自体、鮮やかさと優れた耐光性の維持について製造各社が唱っています。それに現実的には耐光性ばかりが作品の保存性に関わるものではありませんから他の画材においてのその心配(悪条件下で長期保存しない)と変わらないと思います。
ただ組成上メディウムの量が少ないために、画面上のパステルは容易に剥落するので描画の途中、完成後には必ずパステル用のフィクサチーフを吹きつけますが、その際、顔料が定着液を吸い込んでしまい、色調が一段鮮明になりやすいので、前もってどの程度の濡れ色になるのかを確認しておくことも必要です。
画面の保護のため完成した作品はアクリル板入りの額に入れて展示しています。スケッチブックなどに描いた習作はパラフィン紙をはさんでおくと片側のページに写ってパステルが取れる心配がありません。

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モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール【ポンパドゥール夫人の肖像】1752〜55年

また、鉛筆、コンテ、パステルなどの固型画材は下絵、素描のためと思われがちですが、パステルの色鮮やかな面的表現の可能性が、タブローとして認められてきた理由のようです。パステルと言えば踊り子の作品がとても美しいドガ(1834-1917)やルノワール(1841-1919)など印象派の作品が思い浮かぶかもしれませんが、油彩と見紛うばかりの精緻な表現の作品(例えば上画像のラ・トゥール1704-1788やルブラン1755-1842、シャルダン(1699-1779)など)数多くあります。不思議で心地よい夢のような色合いのオディロン・ルドン(1840-1916)の作品はパステルの魅力が詰まっていて絵を見ているとため息が出ます。
このようにパステルは色彩の美しさに合わせて奥深い様々な表現が可能な大変魅力的な描画材料なのです。

長々と読んでいただき、ありがとうございました。
またしばらく間が空くかもしれませんがたらーっ(汗)続けていくのでよろしくお願いします。ホームページの方はほぼ出来ているのですが、全てのページが完成してからお知らせしたいと思います。

posted by Ikuyo at 19:53| Comment(1) | TrackBack(0) | 使用画材について
この記事へのコメント
Posted by at 2021年12月19日 20:47
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